薄暮の森で出会うニコとサラエロス

異世界ファンタジー / 全6話+附録 / 21,979字

沈黙の咆哮(サイレント・レゾナンス)

「この肉は硬い」――翻訳バグだらけの魔導具と、言葉を超えた魂の共鳴。

正体を隠す長命種の旅人と、故郷から逃げた「人柱」の少年。安物の魔導具は、帰りたいという願いさえ肉への苦情に変えてしまう。

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感情を剥奪する「共通語(コモン・コード)」によってすべてが平坦に統制された世界。
かつての伝説を隠し、細身の肩に巨大な戦槌(ポールハンマー)を担ぐ長命種の女旅人・ニコは、森の奥で教導院の追手から逃亡してきた辺境の少年――「人柱」のサラエロスを保護する。

しかし、二人の間には決定的な「言語の壁」があった。
サラエロスが故郷の『翠響語(セルヴァ)』で必死に訴える望郷と絶望の叫びは、ニコの安物の翻訳魔導具を通すことで『苦情申立:コノ肉ハ規定ヨリ硬イデス』といったシュール極まりない無機質な事務用語へと誤変換されてしまう!

言葉はすれ違い、会話は噛み合わない。けれど、ニコの背負う戦槌の封印と、サラエロスの肌に刻まれた秘儀の紋様だけは、確かな「熱」となって互いの魂を共鳴させていた――。

#ボーイミーツガール#人工言語#翻訳バグ#伝説の英雄#長命種#共鳴

全話目次

  1. 第1話 泥の中の紋様、あるいは規則的な水音約6分
  2. 第2話 硬い肉、あるいは歌森への望郷約4分
  3. 第3話 灰色の境界街と、存在しない言葉約5分
  4. 第4話 禁忌の波形、封じられた神槍約5分
  5. 第5話 沈黙の咆哮、壊れた魔導具の果てに約6分
  6. 第6話 平坦でない絆、新しい森の歌約3分
  7. 附録資料 歌森の採録台帳――灰の音と、消えなかった歌約7分

言語・設定資料

言葉は致命的なまでに食い違っている。— 第2話より

翠響語辞典歌森の里の現代語(73語) 始原共鳴語辞典災厄後に封じられた古語(71語) 音声・訳文記録作中セリフの発音と対訳 ギャラリーキャラクター設定画・本編挿絵

魔導具の誤訳と音声

第2話|帰郷の願いは、肉への苦情に

翠響語〈ramel Sasiemsaman nanelmil〉

魔導具ログ:「苦情申立:コノ肉ハ規定ヨリ硬イデス…」

本来の意味

私は歌森の里へ帰りたい!

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第1話|名前を奪わせない、最初の叫び

翠響語〈ramel Rassovel ne〉

魔導具ログ:「通告:当該物品ハ規格外デス。返品処理ヲ要求シマス」

本来の意味

私は『人柱』なんかじゃない!

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第3話|「所有」の場所に開く空白

翠響語〈ramel — ne〉

魔導具ログ:「エラー:所有権データガ破損シテイマス」

本来の意味

私は誰の『所有物』でもない!

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第4話|封印を砕いた、禁忌の歌

始原共鳴語〈shaashi shaashiaa sheshi kaaraashkor〉

魔導具ログ:「《計測不能――計測不能――》」

本来の意味

共鳴の魂よ、封印を砕け!

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禁忌の古語から、歌森の現代語へ

始原共鳴語は世界の始まりと秘儀の源流にある古語。第4話に記された「始原の災厄」では、概念が凍結され、生身の喉を焼くほどの過剰共鳴をもたらした。そのため封印された響きは、時を経て軟らぎ、摩耗した翠響語として歌森の里に受け継がれている。

始原共鳴語(禁忌の古語) ──[災厄の封印と音韻の軟化・摩耗]──▶ 翠響語(歌森の現代語)

sh / zh → s / z。aa / eal → a / el。響きは短く、軟らかくなった。

概念始原共鳴語翠響語
共鳴〈shaashi〉→〈sasi〉
言葉〈zhem〉→〈zem〉
封印〈sheshi〉→〈sesi〉
人柱〈Raashshoveal〉→〈Rassovel〉
沈黙の英雄〈Zaarveal〉→〈Zarvel〉
サラエロス〈Saaraaelosh〉→〈Saraelos〉

第4話「封印を砕く」の響きの聴き比べ
始原共鳴語〈sheshi kaaraashkor〉から翠響語〈sesi karaskor〉へ。

始原共鳴語辞典 / 翠響語辞典