第2話|帰郷の願いは、肉への苦情に
魔導具ログ:「苦情申立:コノ肉ハ規定ヨリ硬イデス…」
本来の意味
私は歌森の里へ帰りたい!
異世界ファンタジー / 全6話+附録 / 21,979字
「この肉は硬い」――翻訳バグだらけの魔導具と、言葉を超えた魂の共鳴。
正体を隠す長命種の旅人と、故郷から逃げた「人柱」の少年。安物の魔導具は、帰りたいという願いさえ肉への苦情に変えてしまう。
感情を剥奪する「共通語(コモン・コード)」によってすべてが平坦に統制された世界。
かつての伝説を隠し、細身の肩に巨大な戦槌(ポールハンマー)を担ぐ長命種の女旅人・ニコは、森の奥で教導院の追手から逃亡してきた辺境の少年――「人柱」のサラエロスを保護する。
しかし、二人の間には決定的な「言語の壁」があった。
サラエロスが故郷の『翠響語(セルヴァ)』で必死に訴える望郷と絶望の叫びは、ニコの安物の翻訳魔導具を通すことで『苦情申立:コノ肉ハ規定ヨリ硬イデス』といったシュール極まりない無機質な事務用語へと誤変換されてしまう!
言葉はすれ違い、会話は噛み合わない。けれど、ニコの背負う戦槌の封印と、サラエロスの肌に刻まれた秘儀の紋様だけは、確かな「熱」となって互いの魂を共鳴させていた――。
言葉は致命的なまでに食い違っている。— 第2話より
始原共鳴語は世界の始まりと秘儀の源流にある古語。第4話に記された「始原の災厄」では、概念が凍結され、生身の喉を焼くほどの過剰共鳴をもたらした。そのため封印された響きは、時を経て軟らぎ、摩耗した翠響語として歌森の里に受け継がれている。
始原共鳴語(禁忌の古語) ──[災厄の封印と音韻の軟化・摩耗]──▶ 翠響語(歌森の現代語)
sh / zh → s / z。aa / eal → a / el。響きは短く、軟らかくなった。
| 概念 | 始原共鳴語 | 翠響語 | |
|---|---|---|---|
| 共鳴 | 〈shaashi〉 | → | 〈sasi〉 |
| 言葉 | 〈zhem〉 | → | 〈zem〉 |
| 封印 | 〈sheshi〉 | → | 〈sesi〉 |
| 人柱 | 〈Raashshoveal〉 | → | 〈Rassovel〉 |
| 沈黙の英雄 | 〈Zaarveal〉 | → | 〈Zarvel〉 |
| サラエロス | 〈Saaraaelosh〉 | → | 〈Saraelos〉 |
第4話「封印を砕く」の響きの聴き比べ
始原共鳴語〈sheshi kaaraashkor〉から翠響語〈sesi karaskor〉へ。